コンパクトディスク

コンパクトディスクが世に出て15年くらいになるだろうか。あっという間にレコードに代わる媒体として普及してしまった。普及の要因は音質の高さと半永久と言われる媒体としての保存性、それと場所を取らないというこの3つのメリットが大きいだろう。また、製造工程の合理化という点でも制作側としては大きなメリットと言えよう。

私が初めてLPというものを買ったのは、井上陽水の「氷の世界」であった。このアルバムは井上をニューミュージックの神様という地位を不動のものにしたと同時に、邦楽では初のミリオンセラーの金字塔を打ちたてた。小学校6年生だった私の当時の小遣いは一ヶ月500円。LPは当時2,200円だったと思う。

このアルバムは凝った作りとなっていて、第1曲の「あかずの踏み切り」と第2曲の「はじまり」が切れ目なく連続して演奏されていたり、その他のところでも様々な意味で画期的であった。アルバムを開けた時のあのLP独特の匂いは、今思い出しても感動的だった。

時は移ろいCD時代になって、LPを聴くときのような手間はいらなくなった。20秒もあれば、封を切って音楽を愉しめる時代だ。けれどもどうだろう。LPを聴くときのあの手間は、今考えると贅沢な時間だったのではないだろうか。あのわくわくする時間。あれを今は愉しめない。

('99/07/17)